なぜ人は詩にひかれるのか?

インターカルトでは、中級以上のクラスで「目的別授業」という科目をやっています。

学生の好きなもの、ニーズによって選んで登録する、つまり、選択授業です。

この1月~3月の学期では、新しく「詩を音読しよう」という科目を私、神本令子が担当しています。

 

日ごろから特に詩というものに傾倒しているわけではないのですが、日本語で書かれたいろいろな詩を紹介し、学生一人一人に自分の好きな詩を見つけてもらえたら面白いなと思ったからです。また、「歌は歌われるために作られ」、「スピーチは語られるために書かれる」と同様に、「詩は読まれるために作られる」と思ったからです。この読むは、黙読ではなく音読です。

今学期は、卒業をひかえている学期ゆえ、その作品のよさをきちんと表現できるような発音で読んでみましょうという目論見もありました。

 

中から、一つでも二つでも「自分の好きな詩」を見つけるためには、選択肢が多いほうがいいとの思いで、できるだけたくさん紹介し、学生たちと解釈し合い、読んでみました。

扱った詩人は、

まど・みちお/茨木のり子/三好達治/木村信子/川崎洋/寺山修司/高村光太郎/

長田弘/工藤直子/辻征夫/山村暮鳥/大木実/河井寛次郎/岸田衿子/俵万智

 

有名な詩としては、

「雨ニモマケズ」

学生が気に入っていろいろな作品を紹介したのは

「相田みつを」と「金子みすゞ」

 

他に、現代社会を今、生きている人たちの詩として、

新聞に投稿された一般の人、いわば「無名の詩人」のものも紹介しました。10作品でした。

短くて読みやすいものを、一回に3~4つ紹介したので、その中からお気に入りの詩を選ぶのは、比較的たやすかったようです。

神本008

また、阪田寛夫の「葉月」という大阪弁の詩は、大阪出身のH先生に大阪弁で録音してもらい、

その圧倒的異次元の世界に一同驚愕しました。

 

ロシアのI君は、恋愛っぽいロマンティックな詩が好きなようでした。

韓国のC君は、詩それぞれのよさを発見し、広く受け入れてくれたようです。解釈が常に深く、

私は時々、自分の浅薄な発想に恥じ入りました。

 

そして、台湾のS君、「これ、何を言いたいか全然わからない」「これが詩ですか。」といつも、

なかなか気に入ったものが見つかりませんでした。

その彼のリクエストで、「百人一首」の中から四つ紹介したら、「今までで一番いい」と言ってもらえました。中国の詩に似ているとのこと。もしかしたら、中国人の彼にとって、五言絶句や七言律詩の世界が詩の世界なのかもしれません。山水や草木、日や月を描き、あまり感情を語らないのが彼にとっての詩なのかも、と思いました。

 

以上、

いろいろな詩を探しながら、私にとっても幸せな目的別授業でした。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください