Archive for 2016年12月26日

「情けは人のためならず」考

インターカルトの中級・上級レベルには「目的別授業」という選択授業があります。

学生のニーズによって、いろいろ選ぶのですが、日本語能力試験対策の読解を担当していて、

「そうか~ !」と、ちょっとびっくりした文章に出会いました。

 

「情けは人のためならず」ということわざの解釈についての文章です。

 

このことわざの意味は、「人に親切にするのは、人様のためではない。人に親切にすれば、良いことが自分に返ってくる」という意味で、つまり、「情けは人のためではない」と言っているのですが、何ゆえ、多くの人に、「親切は、本当にはその人のためにならない」と誤解されているのかについての考察でした。

いわく、誤りのポイントは、「ならず」という部分にあるという指摘です。古語「ならず」は、「なり」の否定形で、意味は、現代語の「ではない」。「情けは人のためではない」が本来の意味であるのに、「人のためにならない」と解釈してしまうので、意味の取り違えが生まれるのではという解釈でした。

私は、この解釈を見て、長年の疑問が晴れた思いがしました。「なり」は、「時は金なり」などにも見られ、現代人にも流通している語彙でしょう。また、「逆は必ずしも真ならず」の「ならず」の方も、多くの人に知られているだろうと思います。

例えば、「そばかすのある肌は、きめ細かくてきれいである」。その逆の「肌がきめ細かくてきれいな人は、そばかすがある」が、「逆は必ずしも真ならず」の一例です。しかし、これを、「逆は、必ずしも本当ではない」と解釈しても、「逆は、必ずしも本当にはならない」と解釈しても、一向に構わないでしょう。つまり、誤解は生じません。

しかし、「情けは人のためではない」と「情けは人のためにならない」は、全然違うのです。

「~になる」「~にならない」のところは、変化の先を表しています。例を挙げると、「僕は、お父さんのような普通の会社員にならない。僕は、ミュージシャンになるんだ。」

私は、「情けは人のためならず」のことわざに接すると、思い出す光景があります。中学生のころ、「友達に宿題見せて」と言われた時に、私は、習ったばかりの正しい意味の、「情けは人のためならず」の裏側にある「親切は、本当にはその人のためにならない」を同時に心に感じたものです。でも、もちろん、断ったことはありませんが。

このように、「頼まれるのは、何だかうれしい」 「頼まれると嫌と言えない」という人は、少なくないと思いますが、その時、きっと、「親切は、本当にはその人のためにならない」と感じながら・・・ということが多いのではないでしょうか。だから、正しい方ではなく、間違った意味の方が、現実生活に合っているとも思いました。

それに、ぜひ言いたいことですが、親切にする時は、普通、見返り、将来的な効果は期待しないのではないか。とも思い、「情けは人のためならず」の正しい意味の方に、少し、功利的なわざとらしさを感じてしまうのです。

目指すべきは、「善意の伝染現象」とでも言うのでしょうか。

 

「情けは人のためならず」の、もっと感じのいい言い方はないものでしょうか。

 

《JR三鷹駅の跨線橋から》 行き交う中央線や電車庫から出入りする総武線が一望できます。

今日は、日本語学校長期コースの神本令子がお送りしました。

インターカルト日本語学校の 2016年 「今年の漢字」

毎年恒例の漢検主催の「今年の漢字」は「金」でした。リオオリンピックで日本の選手が12個の「金」メダルを含む、史上最多のメダルを獲得し、たくさんの感動を与えてくれましたね。インターカルト日本語学校では外国人学生はもちろん教職員一同、「今年の漢字」の応募に協力しています。

さて、当校では漢検に応募した漢字の中からインターカルト日本語学校の「今年の漢字」を発表しようということになりました。12/13にライブ中継で発表を行いましたがご覧になりましたか。

インターカルト日本語学校の「今年の漢字」は「変」

理由として、世界の変化から、留学生活で自分の生活に変化があったことなどいろいろとありました。

他にもいろいろな「今年の漢字」をちょっと見てみましょう!!

まずは、外国人学生が応募した「今年の漢字」ラインナップ・・・

乱、進、驚、丼、雪、金、楽、変、女、新、犬、恐、夢、頑、疲、生、友、哀、恋、年、

青、欅、自信、響、美、祈、冬、復、慣、興、花、凹、光、毎日、機、学、安、茜、選

森、深、震、寂、謙、茨、死、日、面、逆、成、凪、雨、解、怒、越、鬱、曜、婚、二

化、瞬、一、難、扉、好、晴、運、突、科、高、和、静、卒、始、国、悪、字、時、能

揺、縁、鞄、理、勇、陽、泰、狂、神、波、友

 

同じ漢字でも理由は様々で、おもしろいです。

少し紹介しましょう。どの漢字かわかりますか。

《コメント》

・毎日、お金を使いますから。一番大切と思います。

・勉強がたのしい。

・日本で新しい生活を始めた。

・日本に来てから生活は楽しいですけど、大変です。

・簡単でカタカナも同じです。

・今年はN3合格を目指し、日本語の勉強を頑張った。

・すき家の牛丼はとてもおいしい。毎日食べに行く。

・日本に来たときは友達がいなかったが、今は違う。辛いときにそばにいてくれる友達がいる。など

学生にとって、留学生活がまさしく今を表す「今年の漢字」になのでしょう。

 

さて、教職員の「今年の漢字」を見てみましょう。

動、選、辛、赤、問、非、鯉、倫、変、驚、金、虚、飛、守、揺、転、離、解、逆、整、怒、移、迷

《コメント》

・天災、大事件、大事故「転がる」ようにいろいろと起きた年だった。

・高齢ドライバーの逆走事故多発。

・SMAP解散

・今年は25年ぶりに広島東洋カープが優勝。感動した。など

 

一人ひとりの思いが漢字一文字に表われる、「今年の漢字」

来年はどんな漢字が選ばれるでしょうか・・・。