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義理と恥

月曜日の授業は大抵「週末は何をしましたか」と聞くことからスタートします。

クラスメートと銭湯に行った学生、恋人と鎌倉でぶらぶらした学生、一日中家でゲームした学生、様々な答えが返ってきます。「先生は?」と聞かれたときには、5回に1回くらい「ネットフリックスでドラマを見ました」と言っています。本当は毎回、「草津の温泉へ行きました。きれいでしょう?」とか、「名古屋でうなぎを食べました。見てください!」とか、学生の興味を引きそうなことを写真付きで紹介したいのですけど。

最近は「Giri/Haji(義理/恥)」というドラマを見ました。イギリスのドラマなんですが、主役も主役を取り巻くメインキャストもほとんどが日本人です。

物語は、一年前に亡くなったとされる弟(窪塚洋介さん)がイギリスで生きているかも、という情報が入り、主人公の刑事(平岳大さん)がイギリスへ向かうところから始まります。

「義理/恥」というタイトルの印象から、ドンパチドンパチ(銃撃戦)な内容なのかなと思ったら、恋愛・兄弟愛・親子愛・夫婦愛・師弟愛などなど、”愛“がたくさん描かれたドラマでした。

「いいな」と思ったシーンは色々あったんですが、特に印象に残ったのは、終盤5分ほどのモノクロのパフォーマンスシーンでした。言葉は一言も発しません。主人公や主人公の周りの人々それぞれが、それぞれの登場人物に翻弄され続けるものでした。誰かが誰かを受け止めたと思ったらかわされて、よけて、よけられて、ぶつかって、抱きしめあうんだけどまた離れてく・・・みたいな。「わお、いきなり!」と思ったんですが、見続けていたら、「生きるって大変ですよね」なんて言っちゃって、タオルで目元をゴシゴシせずにはいられませんでした(笑)

パフォーマンスが終わって、登場人物間の問題も落ち着くところに落ち着いて、エンドロールを迎えました。

感じたことが二つありました。

一つは、「言葉がなくてもよくわかることもある」と改めて感じたこと。

学校でも、言葉がなくてもわかることに励まされてきました。

まだあまり日本語でコミュニケーションできない学生の、授業中や廊下で会った時の笑顔や笑い声、一生懸命理解しようとする様子。ありがたいです。

でもドラマの中じゃなくて、実際はやっぱり言葉を通して分かり合える瞬間が嬉しいし、楽しいし、学生も楽しそう!もっと自分のことが表現できる言葉という武器を増やしてほしいし、使えるようになってほしいなと思います。みなさん!しっかり基礎を勉強しましょうね!

二つ目は、「問題があっても諦めなければ、落ち着くところに落ち着くよな」ということです。パフォーマンスは、たったの5分だったんですけど、50分のドラマ7回分の人間関係が集約されていました。

劇中も本当に色々な問題が起こりました。やくざのドラマで?どうなの?と言う感じですが、自分のクラスや授業と少し重なるところがありました。

学生同士が楽しく勉強出来て、雰囲気がよくなっていくのって時間もかかるし、勉強したことが定着するのも時間がかかります。

今学期、始まったばかりのクラスの担任も、初めて入る中上級クラスの授業も、「大丈夫か!?私!?」と不安なったりしますが、何か問題があっても、必ず落ち着くところに落ち着くことを信じて、「まずは今日!やるぞ!」と言う気持ちで、今学期も一回一回の授業を大切にしていきたいと思います。

って書いている今もプチ反省中。苦笑

反省はほどほどに切り上げて、次の授業のことを考えようと思います!

田村理絵

はじめまして。田村理絵です。

今月はじめに、大事件が起きました。

大好な劇団が活動を休止してしまったんです。

劇団はほぼ私と同い年。3〇年間、演劇界の一線を走り続けてきました。私はそこ所属の演劇学校の卒業生で、卒業後もずっと、(ここの劇団員だったわけではありませんが、)たくさん役をいただいたり、目標だったイギリス公演に参加したり・・・日本語教師になるまで、ずっとお世話になっていました。このままずっと続いていくと思って疑わなかったなあ・・・。

このニュースを聞いて、劇団の演出家と振付師の先生のことを思い出しました。

演出家は若いとき、演出中、怒りのあまりに眉間のしわから血が出たというエピソードが伝説になるほどの厳しい方です。

いや~たくさん怒られました。

「つまんねーよ!吉永小百合(のような美人)じゃないんだから、とにかく面白くしろ!面白くなきゃ見る価値なし!」

この言葉、何度も叩き込まれたんですが、授業での大前提として、今でもめちゃくちゃ教訓になっています。

その演出家に、12年前の卒業公演の時にもらった言葉があります。

「これから先、色々な理由で演劇をやめていく人もいると思いますけど、ずっと、演劇を愛してください。」

私は今も演劇が大好きです。いつまでも何らかの形でかかわっていきたいです。

日本語の授業にも生かせることがきっとある!

演劇で学んだことをどんどんミックスしていけたらいいなと思っています。

例えば会話の授業。もっと演劇を生かした楽しい工夫ができるんじゃないかと考えるととてもわくわくします。少しずつでも挑戦していきたいです。

(イギリス公演の写真。赤毛のオレンジが私です。)

もう一人は、この劇団を通して、出会った振付師の先生です。

「役者は体の管理ができなきゃダメだ!」ということで、ゼロからダンスを始めたんですが、漫画の一コマかと思うほど、振り付けが変わるたびにみんなの前で一人だけ派手にすっ転んだり、一人だけトンチンカンな振り付けで悪目立ちしてしまったりを繰り返しており、出来なさ加減と劣等感とで、頭ぐちゃぐちゃになりながら、毎日レッスンに通っていました。

 

先生「あれ、背中きれいになったんじゃない!?」

先生「今日どうだった?頑張ってたね!またがんばろうね!」

わたし「ええ!うれしい。今日頑張って来てよかった!」

先生は、「モチベーションがた落ちの生徒」に不思議なくらい絶妙なタイミングで声をかけ、励まし、時には成長ぶりをほめてくれました。

くわえて、先生のクラスはエネルギーにあふれまくっていて、私みたいなド初心者でもめちゃくちゃ楽しいレッスンなんです。2時間あっという間!振り付けも(始めたころよりは)早く覚えられるようになったし、気持ちよく踊る余裕もできたし、何より苦手意識の塊だったダンスが大好きなれたのは、先生に何度も気持ちを前向きにしてもらって、続けてこられたからだと思っています。

ときどき、「先生だったらどうするかな」と考えることがあります。

私も、中々上手にならなくて悩んでいたり、モチベーションが落ちていたりする学生の気持ちに寄り添える教師になりたいです。そして、エネルギーと向上心にあふれていて、一人でも多くの学生に「楽しかった!明日も楽しみ!」と思ってもらえるようなクラスに・・・出来たらいいなあ!ほんとうに!

 

大好きな劇団も、解散ではなく「活動休止」。

終わってしまったわけではありません。あきらめずに復活を待ちたいとおもいます!

明日の授業も頑張ります!

(授業は反省も多いけど、毎日楽しいです)

田村理絵