• 211月
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    留学生の論文指導をしている方とやり取りしていて、
    突然、『言葉とは何か』(丸山圭三郎)という、
    去年買ったままの本があったなと思い出したので、
    今朝かばんに入れて行き、電車の中で第一章を読みました。

    アジアの学生と日本の学生たちが、それぞれの国の
    ポップスや民謡を翻訳し合ったという話がありました。
    その翻訳作業が困難を極めたという話です。
    大変だったのは文法などではなく、
    文化そのものの違いだったそうです。

    (引用)——
    たとえば、かぐや姫が歌ってヒットした「神田川」を
    マレー語に訳したマレーシアの留学生には、
    まず「風呂屋」という語が翻訳不能だったし、
    「同棲」は母国では恥ずべき行為。
    まして「洗い髪が芯まで冷え、小さな石鹸がカタカタ鳴る」
    まで待たされた女が、
    「あなたのやさしさが怖かった」などと言うその心情は、
    マレーシア人には到底理解できなかったと言っています。
    ——

    日本語を教えるということも、昨今の自動翻訳機も、
    冒頭の論文を書いている留学生も、
    問題や課題は、つまりこういうことかな、と思った、
    第一章でした。
    ことばと文化は切り離せない。でもイコールではない。

    写真は昨日、代々木のオリンピック記念青少年センターの
    窓から見えた、赤い夕日と遠くの富士山。
    ことばと文化です、今の興味とテーマは。

  • 191月

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    今日は日曜日なのに、11,448歩も歩き、頭も少し使いました。
    帰って来てから昼寝も2時間ほど。

    駅でドカンと目に入ってきた広告。「へんげ」。
    調べたら、今年、社名を変更したIT企業らしいです。

    「変化(へんげ)」とは、人や動物、あるいは神仏が、
    本来の姿を変えて現れること。
    七変化(しちへんげ)の「へんげ」ですね。
    ヤマトナデシコ七変化♬ の「へんげ」。(小泉今日子の…)

    変化(へんか)とは違う。
    この大きな広告を見上げて、変化(へんげ)の意味を再認識して、
    自分の変化(へんげ)願望も再認識した、本日日曜日。
    七とは言わない、とりあえず一変化でも。

  • 3012月

    他の国のことばではそのニュアンスを
    うまく表現できない「翻訳できないことば」たち。

    たとえば、
    IKTSUARPOK(イクトゥアルポク:イヌイット語)は、
    だれか来ているのではないかと期待して、
    何度も何度も外に出て見てみること。…だそうです。

    SAUDADE(サウダージ:ポルトガル語)は、
    心の中になんとなくずっと持ち続けている、
    存在しないものへの渇望や、
    または、愛し失った人やものへの郷愁。…だそうです。

    BOKETTO(ボケット:日本語)は、
    なにも特別なことを考えずに、
    ぼんやりと遠くを見ているときの気持ち。…ですね。

    などなどが、きれいな絵とともに。

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    どうして二冊あるかというと、
    これを私に貸してくださった人がいて、読んでみたら、
    返すのが惜しくなり、自分用に買ったからです。
    年が明けたらお返しします。と、この間連絡しました。

    今年はほんとに色々なことがありました。

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    以下、楽しい版。

    KARELU(カレル:トゥル語)
    肌についた、締めつけるもののあと。
    (靴下のゴムのあととか?)

    MURR-MA(ムルマ:ワギマン語)
    足だけを使って、水の中で何かを探すこと。
    (プールの中に落とした…なんだろ?)

    COTISUELTO(コティスエルト:カリブ・スペイン語)
    シャツの裾を絶対ズボンの中に入れようとしない男。

    良いお年を!

  • 128月

    最近、日経新聞でチェックしているのが、阿辻哲次の「遊遊漢字学」。
    漢字にまつわる様々な話題が、とても楽しいです。

    先月読んだ記事が中国語の簡体字の話題で、それを読んで、
    6年くらい前に、1年半だけ中国語を習ったことを思い出しました。
    阿辻さんの記事にあった、空港を「机场」と書くということを知らなくて、
    (勝手に)ちょっと怖い思いをしたことがきっかけの一つ。
    もう一つ、どうしても台湾の人たちに直接、自分の言葉で気持ちを
    伝えたいと思うことがあり、スピーチができるようになるために。

    というわけで、中国大陸と台湾と、両方の言葉を習いたかったので、
    文字は簡体字で、発音は台湾式でお願いしますと言って入学しました。

    だから何が言いたくて書き始めたんだっけ。

    同じ漢字で書いても意味が違うということでした。ずれました。
    そうそう、「八方美人」という言葉、
    日本では誰にでもいい顔をするというマイナスイメージの言葉だけれど、
    韓国語で「팔방미인」(八方美人)と言ったら褒め言葉。
    多方面にわたって才能のある人という意味だったなと考えながら、
    ああ、自分は典型的な日本人だなと思ったという話。

    さらに最近は老害も加わった気がして、どうしたものかと。

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    アプリの発達で、最近あまり見かけなくなった時刻表。
    先週、大阪行きの新幹線の中で車内誌のページにあるのを見ました。
    なんだかとても懐かしく。

    どこか遠くに行きたいなあと。
    でも、夏休みはすることがたくさんあってどこにも行かず行けず。

    あはは。
    目はどうして前についているか。自分に言い聞かせなければ。
    簡体字は結構わかるようになりました。
    台湾でのスピーチは5年前に一応なんとかいたしました。

  • 1211月
    Categories: ことば Comments: 0

    この間の金沢で、いずれ恩師となる先生に紹介していただいた本。
    『翻訳できない世界のことば』エラ・フランシス・サンダース著。
    以下は、訳者の前田まゆみさんによる「はじめに」の一部です。
    ……………
    いま、わたしたちの世界は緊密につながり合っていて、
    じぶんの気持ちや、毎日がすばらしかったりつまらなかったり、
    といったことを伝える手段をいろいろ持っています。
    でも、コミュニケーションのスピードや頻度の高さは
    つねに誤解をうむ余地にもなり、
    わたしたちは今までになく、翻訳のなかで迷子になっています。
    頻繁にすばやくコミュニケーションをすることはできても、
    言葉の解釈や、そこにこめられた感情や要望などの
    理解のギャップをうめることは、そう簡単にはできないのです。
    ……………

    “ひとことでは訳せない、世界のユニークな単語たち”が計51個。
    たとえば「ポーレッグpalegg(aの上に⚪︎あり)」ノルウェー語。
    「パンにのせて食べるもの、何でも全部」を意味するそうです。
    じゃあ、同じくこの間の金沢で会ったご夫妻からいただいた、
    能登半島大脇昆布製の「トーストにかけて食べるこんぶ」も
    ノルウェーではポーレッグなのだなと。

    インドの西南部地方の言語、トゥル語の「カレル」は、
    「肌についた、締めつけるもののあと」、
    たとえば、ちょっときつい腕時計とか小さめの靴下のあとなど。

    これを読んで、我が故郷で言う「たごまる」を思い出しました。
    セーターの下に着ているシャツがずり上がって、腕のところで
    ぐしゃぐしゃっとまとまっている状態、「たごまってる」。

    一昨日の文化庁の委託事業、
    「「生活者としての外国人」のため日本語教師初任者研修」の
    初日の第一発目の私の講座中にこれを突然思い出して緊急脱線、
    この「たごまる」の話を“私の故郷 足利”の言葉としてしたら、
    「私のとこ岩手でも言いますよ!」と目の前の受講生の一人が。

    実家の家族や地元の友だちにしか通じないと思っていた感覚を、
    この岩手の人と共有できた!という感動。
    急いで調べたら、北海道弁、仙台弁、茨城弁と、出てくる出てくる。
    そうなのだぁ。日々是発見。

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    というように、土曜日の午前中は文化庁の講座(写真左下)を、
    目の前の受講生とWEBで参加している受講生両方に向けて。
    午後は香港に向けてのオンライン説明会を若者たちと(写真右上)。
    便利な世の中になりましたね。と書きながら、
    冒頭に引用した前田まゆみさんのことばがチラリと頭をよぎる。

    さらに、日曜日はAEONでのボランティア通訳ガイド養成講座で、
    十八番の異文化理解講座「外国人の「なぜ?」」。
    駅でユンケル黄帝液をぐびぐび飲んで臨みましたが^^
    反応のいい皆さんと、楽しく元気になれたひと時でした。

    ことばのあれこれを考えること、とても好きなので、
    この仕事やめられないなと思います。
    翻訳できない日本語を伝え、理解してもらうのも先生の仕事ですね。
    私はといえば、最近はもっぱら、
    日本を背負って「べき論」言うのが仕事のようになってますけど^^;

  • 2910月
    Categories: ことば Comments: 0

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    (2018/10新入生「先輩と話す会」)

    以前「スイスの上にある国」というような言い方をして、
    「北にある国と言って」と注意されたことがあります。

    今読んでいる『ことばと思考』という本によると、
    地球上には「前後左右」に相当することばが全くなく、
    全て「東西南北」で表す言語があるとあります。
    そこでは、私たちが「リモコンはテレビの左にある」と言うとき、
    「リモコンはテレビの西にある」と言うそうです。
    そしてまた「前後」はあるけれど「左右」はなく、
    さらに「東西南北」という絶対方位も用いない言語もあるとか。

    そうなのです。
    だから、日本語の授業で当たり前のように、
    「〜の前にいます」とか「〜の下にあります」とか言いながら、
    実は「???」って思っている学生もいるのかも。
    …という前提を疑う気持ち、何事においても大事ですよね。

    と打ちながら、今日は新幹線で大阪に向かっています。
    「東奔西走」というより「右往左往」です。なんだか私は。

  • 2010月

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    私の年間行事になり得ないもの。ハロウィン。
    そりゃあそう。いい大人になってから登場したのだから。
    クリスマス、バレンタインに次ぐ商業戦略の賜物ですよね。

    今、グローバル人材、外国人人材、そして我らが日本語教育という
    言葉が新聞紙上に現れない日はなく、嬉しい反面、
    労働力不足という目の前の問題回避のために考えました!
    と言わんばかりの、未来像まで考え尽くしたとは思えない方策の
    数々に不安が募るばかり。

    そもそもグローバル人材って?
    「グローバル人材」は、英語由来の言葉ではないそうです。
    欧米では「グローバルリーダー」「グローバルタレント」と言い、
    その意味するところは「グローバル人材」と違います。

    まず、欧米のグローバルリーダー論。
    異文化適応力と同時に、守備一貫性、透明性といった、
    公共性を意識した議論を、経営学・政治学分野を中心に展開。

    次に、日本のグローバル人材論。
    日本の財界の要望にマッチする形で形成された。
    それにより日本では、産官学が議論して、
    その結果、英語力、異文化適応力、主体性、チャレンジ精神という
    属人主義の、“日本企業に適応した職務遂行能力”を高めることが
    育成の中心におかれてきた。

    !?!?!?!?

    ハロウィン騒ぎに乗らないように、
    何でもかんでも欧米志向ではないのだけれど、これ、一考に値。

    グローバル人材って、外国人だけを指すのではありません。
    日本人がまず、グローバル人材になること、
    企業も組織も社会も、日本がグローバル化すること。
    必要性だけで外国人を受け入れるってこと自体が…そもそも!

  • 299月

    最近ずっと気になっている日本語があります。
    それは、「…てございます」。
    「このようになってございます」「こちらに用意してございます」
    「ただ今、検討してございます」「そのように書いてございます」

    「ら抜き言葉」(見れる、食べれる…)の流行が若者発だったのと違い、
    官庁やその出身者、時に企業の偉いちゃんとした方がお話になる場で
    多く散見(散聴?)されるのが厄介なところかと。

    かつて、優美で上品とされた宮中に仕える女房の言葉が、
    将軍家に仕える侍女、武家や町家の女性、そして男性へと伝わり、
    今では誰もが使う言葉(おかず、しゃもじ…)になっているように、
    言葉は生きているのだと思います。

    しかし。
    私は、ら抜き言葉も、冒頭の「…てございます」も気持ち悪い。
    言葉は生きているのだからと言わないで!市民権を与えないで!
    と、強く思ってございます、じゃなく、思っているのでございます。

    ※しかしながら、ら抜き言葉とされる「来れる(これる)」を
    我が故郷では普通に使うので(方言と呼ぶか?)、
    我が主張に矛盾ありとおっしゃる輩(御仁)もいらっしゃいます。

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    ところで、昨日は、学校法人長沼スクール 東京日本語学校の
    創立70周年記念講演と祝賀会にご招待いただき、渋谷に…。

    日本語教育界をまったく知らない方に、
    「日本語教育史に載る、最も歴史ある日本語学校です」
    としてきた私の説明、形容は正しかったなと終始思うひと時でした。
    今日のタイトル「日本語・日本人・日本文化」は、
    記念講演をされた近藤誠一 元文化庁長官のお話。沁みました、心に。

    そしてそして、なんとも美しく耳に届いたのは、
    長沼現理事長の「大変嬉しゅうございます」などなどの言葉遣いでした。
    「…しゅうございます」(懐かしゅうございます、美味しゅうございます)を
    他の方に違和感なく自然に使いこなせるようになりたいけれど、
    北関東で空っ風に吹かれて育ったのでね…と言い訳している私にとっては、
    さすが長沼直兄先生の末裔でいらっしゃるという思いに浸ることのできた
    ひと時でもありました。

    追記。
    調べたら、なんと!創設者 長沼直江先生は群馬県伊勢崎市出身と!
    空っ風吹く北関東の、言うなれば同郷出身でありました^^

  • 245月

    最近声に出して言った「腹」を使った慣用句。
    「腹が立つ 」「腹をくくる 」「腹を割る」
    最後のは「腹割って話しませんか」と前のめりになって。

    専ら日本語教師をしていた時代には、
    「体を使った慣用句」なんていうのをまとめて
    (当時はそんな気の利いたテキストはなかったから)
    嬉々として授業をしていたものです。
    学生も好きですよね。(上手になったような気になる。)

    今、大辞林で知った「腹が太い」は使用経験なし。
    「度量が広い、太っ腹である」という意味だそうです。
    我が身を振り返ると、どっちかというと太っ腹な方、
    …だと思うのだけれど、それよりほんとの太っ腹、
    写真の象のごとし~_~; また、酵素で断食かなあ。。

    話を戻して、冒頭に挙げた「腹が立つ」、
    様々あれど、昨日今日のだったら、そりゃあアメフト。
    あり得んでしょ。

  • 1211月

    前回ここに書いた公衆電話の話。反響が少々。
    赤、黄、緑、グレーがあると書いた私の文に対して、
    今日も、黄色と緑なんて見たことありませんよ〜!
    …という声があったので、帰りの駅で撮影して証明。
    黄色は確かに過去の産物の模様。…あったのは確かです。

    ところで、ここのところ度々ある機会。
    その一、異文化理解講座で話をする機会。
    その二、理系男子と意見交換をする機会。

    その一では、日本人に向けて、
    外国人が日本で遭遇する様々な異文化体験を通して…云々。
    日曜日の今日もそのお仕事を新宿で。

    その二では、そんなことを喋っている私が異文化体験。
    例えば、公衆電話を使ったことがない人たち。
    いや、これは文化が違うのではなく、世代の違い…でした。
    では、この間のこれは?

    私がホワイトボードに記録していく役をした時、
    乖離(かいり)の乖の字を書こうとして、
    「あれ?こんな感じでしたよね」と言うと、皆一斉にさらっと、
    「カタカナでいいですよ」。え?…で私は「カイ離」と。
    しかし私は不本意。思い出せなかった自分が悪いのだけれど。

    しかししかし、日本語教師の文化(いや本業)では、
    誰かがささっと教える。調べる。…ですよね、こういう場合。
    でも理系たちは、伝わればいい、するべきは議論を続けること。
    (日本語を生業にする者も議論は続けたい。しかし漢字は重要。)

    あ、文化が違う!とびっくりして、それを言ったら、
    は?何でそんなことで驚くわけ?カタカナでいいじゃないっすか。
    会議の議は絶対「ギ 」ですよ、と。つまり「会ギ」。
    ああ、それなら私も手帳にそう書いてるなあ。。

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